tsubaki_style2008-11-30

革を使う仕事で困るのは、やり直しがむずかしいことです。革は高価な材料というだけでなく、すべて一点モノで、たとえ同じ染めのものを買っても、一枚一枚表情が違います。だって、生き物だから。私の場合、イメージは素材から入ることが多いのですが、たとえば今作っている牛の荒々しい毛付きの革のバッグ。一枚の革を広げて見ると、どういう理由でかわからないけれどダイナミックに毛がこすれて剥げている部分がやけにかっこよくて、それを生かしてデザインしようとひらめきました。で、バッグの大きさはそのかっこいいと感じた部分の広さから決まります。そして、この染めていない牛のそのままの色を生かすために黒をアクセントに持ってこようと思いました。持ち手は、ワニの型押しでさらにインパクトを加え、バッグの裏、持ち手の裏は黒です。
今日は、持ち手のサイドを手縫いして仕上げ、いよいよ本体につけました。そして、つけた後、黒い革の部分をワックスで磨いて、なじみをつけていたら・・・・ショック!!
黒い色が出てきました。ああ、こんなこと、たまにあります。染めが安定していなくて色が出ること。色が出始めると、いくら磨いてもだめ。色止めを塗ってみましたが、私の気持ちはもう無理。お客様が持って、もし、手に黒い色がついたら・・・もし、お洋服が汚れたら・・・。
えい!幸い糊はまだ乾いてないので取り外すことはできます。泣く泣く取り外しました。持ち手は一から作り直しです。ワニ型押しの革もその模様がうまく出ているところを選んでカットしたので、またもう一回というのは痛いです。手縫いは時間がかかります。でもこれは仕方ない。気合入れてもう一度・・・です。革をカットして、今夜はもう遅いので明日続きを。
世の中にたった一点しかない・・・それは、つくる私だけの自己満足に終わってはいけない。世の中に一点しかないものに出会いを感じ、「欲しい!」とときめき、大切なお金を使って自分のものにしてくださる方が、満足してくださらなければ何も意味がない。
私にはつくる喜びがあり、つくる時間があるから、いくらでもがんばれます。