tsubaki_style2006-09-01

固い革や複雑な部分を縫っていると、指が痛くなってきたり、変な拍子に針が滑って刺さったりすることがあります。昔から変わらないこの指貫を使うとかなり安心して縫えます。私が小学校で手芸クラブにいたころから、まったく同じデザインですね。運動が苦手で、手先が器用だった私は手芸クラブで、一生懸命刺繍をしていました。6年通った女子校では、ヒステリックな家庭科のシスターがいやで、針仕事が好きにはなれず、破天荒で個性的な美術教師に惹かれて、美術が面白くなり、自分の道はこれだと確信し・・・とにかく芸大に入れるなら、何科でもいいと、選んだ工芸科では、塗装は面白くなさそう、陶芸は作るものが小さくてつまらない、で、染織科を選んだのです。そのころは、染織といっても大きな立体作品を作り、現代美術に参入し始めた時代でした。アヴァカノヴィッチの頭のない人型がずらりと並んだ作品に衝撃を覚えました。合わせて6年通った芸大では、好きなことをしたけれど、一言で言えば、染織科に行ってつまらなかったです。織ったり、染めたりしたもので、大きなオブジェを作っても、自分自身に必然性が感じられず、いつももどかしさを覚えていました。考えてみれば、表現したいものを不自由な表現手段で、こじつけに近い形で表していたのです。長い長いものつくりとしての暗黒時代を超えて、月日が経ちニューヨークへの旅でそんなつき物が取れて、今こうやってクリエイターとして遅いスタートをはじめて思うことは・・・いろいろ迷ってきたけれど、変わらないのは、面白いことを考えるのが大好きなこと、手を使うのが大好きなこと。手芸クラブ生だった私はやはり今も針を持っているのです。あのころより、もっと自由になって。