tsubaki_style2007-07-07

父の病室、ドアを小さくノックする音が・・・。開けると、老夫婦が二人杖をついて、綺麗な薔薇の花束を持って立っています。父の妹夫婦です。こんな弱々しい姿になったのを見られたくないと、首を振る父に優しく手を差し伸べて話しかけるおば夫婦・・・私が会うのはもう20年ぶりくらいです。ひとまわりもふたまわりも小さくなった二人は90歳と80歳。いろいろあったけれど、すべてを乗り越えて、今互いをいたわりあって寄り添っている姿はとても綺麗でした。今の若い世代なら、離婚という手段を簡単に選べるかわりに、こんな形の素敵な老後はないのでしょう。老いた兄と妹が小さな皺だらけの手を取り合って、交わす言葉は少ないけれど、気持ちは痛いほど通じているのが、そばで見ていてわかります。叔父は何十年と、毎年手彫りの年賀状を送ってくれます。若い頃は達筆の漢詩、力強い干支の絵柄に感心しましたが、年々細くなっていく線に叔父の年を感じていました。こんな形でしたが、叔母夫婦に会うことができて、良い日でした。明日、今日のお礼の手紙を書こうと思います。父は、今日、私たち夫婦や、叔母夫婦、たくさんの人に会って、疲れたと言いながらもまんざらでない笑顔でした。そして、私が病室を出るとき、いつものように、小さな声ですが、「忘れ物はないか?」と言ってくれました。