tsubaki_style2006-10-11

鴨鍋です。残念ながら合鴨ですが。今日は味噌味でしました。美味しかったけれど、いつものおだしの方が好みかな。何年か前、京都の木津川沿いの笠置温泉に行った時、ひなびた温泉旅館に「鴨鍋やっています」の看板を見つけました。外観はひなびたいい感じの建物でした。玄関を開けて、お昼だけ頂いてお風呂に入れるか聞こうとしました。「ごめんください〜」と何回呼んでも、返事がありません。なんかやばい感じがして、帰ろうと思ったところに奥から人が出てきて、帰るきっかけを失いました。お風呂も鍋も込みで5000円でいけるというので、案内されて廊下を奥にどんどん進みましたが、古い床板は斜めにゆがんで、歩くと酔いそうな感じです。通されたお部屋は窓もガタピシ立て付けが悪く、掃除も行き届いていません。あちこちに埃が・・・。お風呂はというと・・・・蜘蛛の巣は張っているし、天井の電気は玉切れしているし、古びたモザイクタイルはコケが生えてぬるぬるです。体勢を変えようとしたら、ズルッと滑りました。気持ちはどんどん沈んでいきます。お風呂から上がって、パートナーと、「かなり激しかったなあ・・・。」もう出てくるお鍋には期待が出来ません。お部屋に戻るとまもなく、この旅館にぴったりの年配の仲居さんがお鍋のセットをしに来てくれました。彼女の話では、この温泉にもにぎわっていた時代があったけれど、今はめっきりお客さんが減り、この一軒だけになりましたとのこと。多分、昔はこの部屋の窓の木枠の桟も綺麗に磨き上げられていたのでしょう。で・・・・その鴨鍋の味はというと・・・・極上でした。傾いた廊下や蜘蛛の巣の張ったぬるぬるのお風呂で受けたショックなんか払拭してくれる感動の味でした。あれ以来、あの味を求めて、何回か鴨を買ってはチャレンジしてきましたが、未だあの味には出会えていません。忘れられない不思議な宿でした。もしかしたら、経営者は笠置山の狸さんだったのかもしれません。